インターネットに公開されているアナログ回路設計の学習資料

アメリカの大学, 大学院では、講義の内容をインターネットで公開していることがあります。アナログ回路設計を自習するためのリソースを探してみました。

Stanford大学の工学部 (school of engineering) では、いくつかのクラスの1学期間中の授業の内容すべてをインターネットで公開しています。授業を録画したビデオや、授業中に配布されたプリント(pdf)などがすべて公開されているので、1学期間の授業の内容をほぼ完全に体験することができます。体験できないのはテストくらいです(笑)。ただ、公開されているクラスの数は少ないです。電子工学科(Electrical Engineering)のクラスで公開されているものは以下のものです。残念ながらLSI回路設計に直接関連するクラスは公開されていません。

The Fourier Transform and its Applications EE261
Introduction to Linear Dynamical Systems EE263
Convex Optimization I EE364A
Convex Optimization II EE364B
  • Intel Higher Education VLSI Curriculum, Intelが提供しているVLSI設計の大学院レベルの講義の資料です。Intelは、様々なレベルの教育を広く一般に提供する活動を行っていますが、その中でもHigher Educationは大学院レベルの講義を提供するプログラムのようです。VLSI設計の講義の資料も公開されています。これが、過去にどこかの大学の寄附講座として行われたものなのか、など詳細は良く知りません。内容は非常に実践的になっています。このプログラムを通じて、Intelは企業のブランド価値を高める(あと、x86のユーザを増やす?)ことを目標としているのだと思います。

高速インタフェース開発 (Serdes開発) に最も役立つ講義は、Signal Integrity for High Speed Circuitsです。Serdesを初めとする高速シリアル伝送を用いたシステムを解析するために必要な知識が良くまとめられています。しかも、驚くべきことはこの講義資料は2002年ごろからすでにここで公開されています。世の中でsignal integrityの重要性が広く認知されるよりずっとまえに、ちゃんと大学院でsignal integrityを講義していることに、USの大学院のアナログ設計の講義のレベルの高さを感じます。

数年前まではわざわざ外国の大学に留学しないと得られなかった教育を、今日では世界中のあらゆる人がある程度のレベルまでは無料で得ることができるようになっています。PCとインターネット接続があれば、英語力とやる気がある限り、(効率の違いはあるにしても)どんどん新しい知識を学習することが出来ます。特に、いわゆる発展途上国の若者にとっても学習の機会は大きく広がっていることを意味しており、日本のような先進国に住むエンジニアにとっては、発展途上国に住む若くて優秀で野心もあるけど賃金水準はまだ高くないエンジニアとの競争がますます激しくなることを意味します。この辺の事情は、このエントリに良くまとめられていると思います。
原油高と同じくらい深刻な「ホワイトカラーの仕事破壊」