ディジタル・エラー訂正技術入門

誤り訂正符合の勉強のために、今度はディジタル・エラー訂正技術入門という本を読んでいます。この本は、数学的に厳密さを追求した教科書というよりは、実際に回路を設計するエンジニアに誤り訂正符号に関する必要最低限の知識を提供することを目的としています。前半部分のガロア体、Hamming符号、巡回符号、BCH符号、Reed Solomon符号あたりまでは、非常に丁寧に説明してあり、筆者の熱意を感じ取れます。しかし、それ以降のReed Solomonの復号法(Berlekamp Massey法)、畳み込み符号、MAP復号、SOVA、Turbo符号に関しては、内容が高度になるに反比例して説明が少なくなります。とてもこの本だけでは、これらの内容を完全に理解することは出来ません。あと、後半に進むにつれて誤植が多くなっていく事も気になります。明らかに、締め切りを意識して完成を急いだ様子が伺われます。
でも、良い点もいろいろある本です。まず、SOVAを用いたTurbo符号の復号について、例題を用いて復号のステップを順をおって丁寧に説明してあります。これだけの説明があれば、MatlabやRTLを用いて最低限の動作を確認できるTurbo符号の復号器を設計できそうです。(ただ、理論的な背景の説明が不足していたり、数式の導入の厳密さが欠けていたりするので、記載されている復号方法を「手順」としてそのまま受け入れることしかできませんが・・)。Reed Solomonの復号法であるBerlekamp Massey法に関しても、「手順」に関しては十分な説明があります。この本を読めば、理論は大体理解できたけど、それをどうハードウェアにインプリすれば良いか全く見当もつかない、ということは無さそうです。あと、筆者のガロア体の説明は数学的に厳密というよりは非常に感覚的ですが、それが非常に分かり易かったです。この本で初めてガロア体を理解できました・・。