図解でわかる はじめての画像処理

友達のブログで紹介されていたので、思わず購入してしまいました。この本を読むと、デジタル画像処理に関わる技術はとても幅広いことがよく分かります。例えば、静止画、動画の規格、圧縮のアルゴリズム(ハフマン符号とか動き補償とか)、画像をプリンタで印刷する際の処理技術、テレビで動画を表示する際に使用されている技術、自動車に設置されたカメラの映像を走行に活かす技術などです。

この本の素晴らしい点は、各種の画像処理技術が私達の生活のどのような場面で必要とされているか、というバックグラウンドを丁寧に説明していることです。どのようなアプリケーション(画像処理のニーズ)があって、そのためにどのような技術的課題があって、それを解決するためにどのような処理技術が開発されたかを順をおって丁寧に説明されているために、初心者や門外漢でも最後まで興味を持って読み終えることが出来ます。

逆に、本書の問題点は、バックグラウンドの説明で終わってしまっていることです。各種の画像処理技術に関して、C言語のサンプルコードが記載されている訳でもなければ、Matlabのコードが載っている訳でもありません(大学の画像処理のクラスの1回目の講義だけで終わってしまったような感じです)。この本を読んでも、何かの処理を自分で実験出来るようになる訳ではありません。まあ、それは本書の目的ではない、ということなのでしょう。

とは言っても、もちろん技術的な説明もしっかりあります。例えば、画像を縮小する際に生じるエリアシングという現象の説明です。画像サイズ(画素数)によって表現できる最大の空間周波数の値が決まります。画像のサイズを縮小する(画素数を少なくする)と、表現できる最大空間周波数の値が小さくなるので、元画像にその周波数より高い成分が含まれている場合には、縮小後の画像にエリアシングが発生して画像が歪んでしまいます。エリアシングを防ぐには、(時間領域の信号処理と同様に) アンチエイリアスフィルタで高周波数成分をカットすれば良く、画像処理ソフトはこの処理を自動的に行っているそうです。