誤り訂正符号とその応用 (先端技術の手ほどきシリーズ)

この本は、前半と後半の2部構成になっていて、前半では誤り訂正符号の基礎的な原理を簡単な数式を使って説明し、後半ではVTR等の具体的なアプリケーションで使われている誤り訂正符号の紹介を行っています。前半の説明がカバーしている内容は、ハミング符号、巡回符号、BCH符号、Reed Solomon符号、ガロア体、畳み込み符号などです。前半は特に数式が多めですが、全部でも300ページ弱しかない本なので、なんとか心が折れずに読みきれそうです。

    • 基礎的な内容を意図していることに加えて、出版されたのが96年という古い本なので、誤り訂正符合の世界の最近の「はやり」の技術(例えば、ターボ符号とかSOVAとか)については殆ど触れていません。あと、後半部分で取り上げられている誤り訂正符合のアプリケーションには古い物が多くて、なんだかなと思います。デジタルVTRや8mmビデオ用の誤り訂正符合を読んでも、今後どこかでその技術を利用できる気がしません。もちろん根底にある考え方を理解するのは大切なんでしょーけど。
    • 音声、画像の記録に関わる誤り訂正符号のアプリケーションが多く取り上げられている理由としては、この本は「映像情報メディア学会」が編集していることもあると思います。通信分野のアプリケーションの説明は殆どないです。
    • 後半のアプリケーションの章は、複数の著者が1章ずつを執筆しているためか、章によって完成度にばらつきがあります。章によってはTYPOが多かったり、余りにも説明が省かれていて内容を全部理解するのは不可能だったりします。特に、完全差集合巡回符号についてとか。

いろいろ文句はありますが、でも全体的に良くまとまった分かり易い本です。読み終えると、なんだかすごく分かった気になれる本です。