10GBase-Tの現状

10GBase-Tは、ツイストペアケーブルを使って10Gbpsの伝送レートを実現する有線LANの規格です。技術的な観点からは、10GBase-TにはLDPC符号やクロストークキャンセルなどの信号処理や、高速、高分解能なADCなど、エンジニア心をくすぐられる技術がたくさん使われています。しかし、ビジネス面では、10GBase-Tの普及はあまり上手く進んでいないようです。普及を妨げている原因は、高コストと高消費電力です。普及が進まないから、量産効果で価格が下がらないという悪循環から抜け出せていないです。

日経エレクトロニクスでは、2006年9月号で、より対線の最後の挑戦, 10Gビット/秒の主役を競うという記事を掲載しています。この時から、コストや消費電力に対する懸念は強かったようです。

2010年の状況がLinley Chips Inというblogの10GBase-T Market Continues To Consolidateというentryに書かれています。

10GBase-T vendors began to consolidate in 2010. The primary driver for consolidation is the small volume of shipments of 10GBase-T PHYs. Adoption has been slow due to these PHY's relatively high power dissipation. Although converting designs to 40nm helps reduce power, 28nm technology may be required for really large volumes. Thus, the investors in 10GBase-T startups need to either double down to 28nm technology or pull out.

2010年には、10GBase-TのPHYを手がけるベンダの統合が進んでいます。統合が進む理由は、出荷台数が少ないことです。PHYの消費電力が高いために、なかなか市場に受け入れられていません。消費電力を十分な値にまで削減するには、おそらく28nmのCMOSプロセスを用いる必要があります。10GBase-Tを手がけるstartupに出資している投資家にとっては、出資額を倍増させて28nmの開発を進めるか、この時点で手仕舞いにするかの判断を迫られています。

同じblogの一つ前のentryである10GBase-T Vendors Consolidateにも、同じ状況が書かれています。10GBase-Tの量産時期が遅れるにつれてstartupは資金面が苦しくなり、Broadomのような大手に有利な状況になっています。
参考リンク

市場調査会社Communications Industry Researchers, Inc.(CIR)は、報告書「40/100 GigE Markets: 2009-2013」では、40/100ギガビットイーサネット製品の売上が、2010年に急増しはじめその収益は、2013年までに4億8200万米ドルへ達するとしています。